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古レール JR 東海東海道本線【吉原駅】

4 スパンだけの古レール。

2010/03/02 公開。

概要

JR 東海東海道本線吉原駅は首都圏に住む私にとって古レールの調査対象としては東海道本線はあまりにも大物であるため実質的にほとんど調査を実施していないが、富士市にある岳南鉄道の存在を知人に教えてもらったので何はともあれ JR との乗換駅である同駅を訪れた際に偶然発見したものである。

そして、これまた行き当たりばったりであるが岳南鉄道でも古レールの調査を実施し、以下の調査報告書を公開しているのであわせてご覧頂きたい。

本題に入ろう。岳南鉄道としての吉原駅での調査報告書でも述べたが鈴川駅の名で 1889 (明治 22) 年 2 月 1 日に開業した歴史ある駅である。しかし、駅名にもなっている吉原の中心部からは離れた場所にあることと、周囲が工業地帯であるためか休日は比較的閑散としているようである。

また、JR 貨物の駅でもあることから構内には多くの側線があり貨車の留置も見られるためどちらかというと貨物が主である駅のように見える。なお開業当時から旅客のみならず貨物の取り扱いを行っている駅である。現在同駅の位置する富士市はなんといっても紙の街である。駅周辺にも製糸業関連の工場もあるが、それ以外の業種も多い。

だからという訳ではないだろうが、同駅のホーム上屋は少なくとも終戦後までわずかにしか設置されていなかったようだ。それは前述の岳南鉄道吉原駅の古レール調査報告書に紹介した終戦直後の航空写真をご覧頂くとかなり粗い解像度ではあるが確認できる。ホーム上屋がホームのところどころにのみ設置されていたようである。それらのうちホーム両端のものは恐らく荷物上屋だったのだろう。

同駅の古レールはこのホーム上屋と岳南鉄道へ連絡する跨線橋に使用されているが、跨線橋については岳南鉄道として取り上げたため当報告書ではホーム上屋のみが対象となる。

あまり深く考えずに跨線橋を岳南鉄道の調査報告書に含めたが、やはり JR の資産と考えるのが自然な気もしているのが正直なところである。

調査日:2009/08/08

調査結果

架構

同駅における古レールによるホーム上屋は東京方になぜか 4 スパン分のみ残されている。写真で分かる通り Y 字型の柱とシンプルな梁とによる架構となっている。しかし、この写真では少々分かりにくいかも知れないがこれはこちら側の妻面だけである。残りの柱は 1 本の古レールがシンプルに鉛直をなしているのみである。

JR 東海東海道本線【吉原駅】ホーム上屋古レール全景

最初の妻面以外の架構を見る。柱がシンプルになったこともあり、全体的に極めてシンプルな架構である。都心の駅と異なり看板や標識の類が一切なく架構そのものが非常に観察しやすい。

JR 東海東海道本線【吉原駅】ホーム上屋古レール架構

全体を東京方から望む。梁の中央のみがわずかに山形に曲げ加工されているものの、それ以外の個所は全て直線で構成されている。さらには全体的にレール断面が大きい。これはつまり比較的後年にこのホーム上屋が設置されたのではないだろうか。

奥に見える立派な跨線橋の設置に伴いホーム上屋の一部が撤去され、このようなわずか 4 スパンの古レール上屋が生き残ったのではないだろうか。

JR 東海東海道本線【吉原駅】ホーム上屋古レール全景

建物資産標である。旧国鉄の駅では一般的に『建物財産標』と記されている場合が多いような気がするが、ここではあくまでも『資産標』となっている。これによると、1918 (大正 8) 年 3 月となっているため、開業からこの年までホーム上屋は存在していなかったのかも知れない。

JR 東海東海道本線【吉原駅】ホーム上屋建物資産標

刻印

今回調査したホーム上屋の古レールについては以下に挙げたもの以外にも 1960 年代等の比較的新しい古レールも存在したと記憶しているが、独断と偏見で割愛させて頂いた。

No 刻印 場所 備考
1 70-H-WENDEL-VI-27-TS-33 >>→ ホーム上屋 フランス、ウェンデル社、1927 年 6 月製造(当年 33 回目の溶鋼)※他の英数字は意味不明

No.1

JR 東海東海道本線【吉原駅】ホーム上屋古レール刻印

総評

今回は刻印が一つだけの発見となったが、私にとっては WENDEL は初見であり、非常に有意義な調査であった。なお、この古レールは『レールの趣味的研究序説〔再補・下〕』によると、鉄まくらぎの試験のため御殿場線の谷峨~駿河、足利~御殿場間に敷設されたもので、フランス国内向けの一般品であるとのこと。つまり本来の日本等の外国への輸出向け仕様のものではなかったということである。

さらに、同紙ではこのレールはとことんまで試験に使用されたらしく、頭部がかなり摩耗しているとの記述がある。ここで紹介した写真では分かりにくいかも知れないが確かに摩耗しているようである。

現在では、この短いホーム上屋は通常の列車の停止位置からは外れているのか、さらには跨線橋から一旦屋根が途切れることもあり寂しい利用状況にも見受けられるが、綺麗に塗装もされ今後もしばらくはこのまま残るものと思われる。

参考文献等


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