岳南鉄道の途中駅では唯一の古レール。
2010/01/25 公開。
岳南鉄道吉原本町駅は 1949 (昭和 24) 年 11 月 18 日開業と当サイトで取り扱う駅としては比較的近年の開業である。実は岳南鉄道について西日本出身の私は存在すら知らなかったのだが、Web 上で知り合ったとある知人が沿線住民として『渋いローカル線ですよ』と私に紹介してくれたのである。
早速 Web で調べてみると、距離こそ短いものの個性あふれる鉄道と感じたため廃線でも無ければ歴史的構造物があるかどうかも分からないまま訪れたのである。
また、Web で調べた限りではホーム上屋等に古レールが使用されている様子は伺えなかったが実際に全駅を訪れたところ、今回紹介する吉原本町駅と JR 東海東海道本線との接続駅である吉原駅に古レールが存在することを発見したため何はともあれ調査となった。
とは言え、せっかく東京からはるばる訪ねたので何か面白いものはないかと、せっかく一日乗車券を買いながら終端駅である岳南江尾駅まで前面展望動画を撮影し、そこから今度は吉原駅の二駅手前の吉原本町駅まで線路沿いを徒歩で調査したため疲労困憊していたのと、同駅に着いた頃には強烈な西陽を浴びることとなり、非常に見辛い写真となっていることを最初にお詫びしておきたい。
また、本報告書では古レールに特化して紹介するが、岳南鉄道のほぼ全線を歩いた中でいくつか私なりに面白く感じたものを記録しているので別途報告したいと思う。
調査日:2007/11/23
同駅での古レールはホーム上屋の一部に使用されているが、駅本屋及び改札に近い部分は木造であるため、恐らくは後年のホーム延伸時に新設された上屋部分にのみ古レールを用いたと考えられる。
構造は至ってシンプルであり、画面右側の壁の部分も含め柱と大梁に相当する箇所に古レールが使用されている。余談ではあるが、木造のベンチがいい感じである。
同駅では以下の刻印を発見することができた。絶対量が比較的少ないが、皇紀表示のものが含まれており驚かされる。駅自体の建設年代や後年のホーム延伸と考えると特に古い年代の古レールは接続する JR から融通したものかも知れない。
No | 刻印 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | UNION 07. 工. | ホーム上屋 | ドイツ ウニオン社 1907 年製造、官営鉄道発注 |
2 | 30 A (S) 2602 IIIIIIIIII OH | ホーム上屋 | 30kg / m、日本製鉄 皇紀 2602 (西暦 1942) 年 10 月製造、平炉製鋼法 |
3 | UNION 1902.I.R.J. | ホーム上屋 | ドイツ ウニオン社 1902 年製造、鉄道作業局発注 |
岳南鉄道はいわゆるローカル私鉄であり、しかも盲腸線でもあることから何かと厳しい経営状況と思われるが、個人的には味わい深いものを感じる路線である。東京からだと少々早起きすればゆっくり訪れることが出来るため出来ることなら再訪した上で写真も撮り直したいと考えている。
実のところはその後も同鉄道主催の鉄道イベントを訪れたりしたが、あいにくの雨だったこともあり古レール調査としての吉原本町駅の再訪は叶っていないのである。
また沿線には今となっては珍しい電鈴式警報機を備えた踏切もある。これらを含め私なりの沿線探訪の様子を別途紹介したい。と言っても、実はその際撮影した動画は前面展望動画を含め既に YouTube で公開済みであるが。