JR 東日本品川駅は我が国初の鉄道開業路線である新橋~横浜間の駅として 1872 (明治 5) 年 6 月 12 日に開業している。なお、新橋~横浜間の正式開業は 10 月 15 日であり、それよりも当駅~横浜間が先行して仮開業していたのである。
つまり、我が国の鉄道の歴史のシンボルとして取り上げられることの多い新橋駅よりも先に開業した最古参の駅の一つである。当報告書執筆時点で開業から実に 138 年が経過しているのである。
かつて品川駅は高輪の海岸沿いに建設され線路より東側は海であった。駅の拡張や都市開発と共に海は埋め立てられ現在ではそれが嘘のようである。
そして 5・6 番線ホームの東京方にこの碑はある。列車の停車位置からは大きくはずれた位置にあるため、じっくりと鑑賞可能であり撮影も容易であるため是非訪れて欲しい碑である。
なお、当報告書では当碑を『安全祈念碑』としたが、実際にはそれだけにとどまらず異なるタイミングで設置された複数のアイテムが同居している複合的な碑である。
調査日:2008/05/18
項目 | 内容 |
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正式名称 | 品川駅開業 130 周年安全祈念碑 |
所在地 | 東京都港区高輪 3-26-7 品川駅構内 |
設置年月日 | 2002 (平成 14) 年 5 月 |
建立者 | 品川駅、品川地区指導センター、田町運転区、田町電車区、大井工場、東京土木技術センター |
機関車の動輪で構成された同碑は冒頭でも述べた通り、それだけではなく上部に『鐘』も備わっている。そしてこれらはそれぞれ異なるタイミングで設置された複合的な碑となっている。
ただ、列車の停車しない位置にあるため、そもそもこのような碑が存在することをご存じない方も多いかも知れない。かく言う私も隣の京浜東北線の車窓から初めて気がついたのである。
扁額というか、『安全祈念碑 品川駅開業 130 周年記念』と刻まれたプレートが設置されている。
また、台座には建立者と見られる組織名の刻まれたプレートもある。多くの関係者が関与していることが伺える。
動輪はスポークタイプであり、この手によくありがちな蒸気機関車のものではない。残念ながら車番の刻印の調査をし忘れてしまったため、再訪の上調査したいと考えている。蒸気機関車の動輪には車番の刻印があることを比較的最近知ったが、同碑の調査時にはそれをすっかり忘れていたのである。
また動輪自体は別途支えがあるもののレールも付属しており、車輪とレールという黄金の組み合わせとなっている。
また、台座にはこの動輪の説明プレートが埋め込まれているが、旧東京機関区に配属されていた『電気機関車』であるという記述だけで具体的な形式及び車番の記述がない。やはり再訪し動輪自体の刻印の調査が必要である。
裏に回ると動輪を支えている支持材に『大井工場 平成 14 年 5 月吉日』とのプレートが取り付けられている。ちなみに平成 14 年こそ同駅開業から 130 周年の年である。
なお、そのレールについては当サイトで取り上げるような歴史的な『古レール』ではなく、今日の最上級クラスに位置する 60kg レールがあてがわれている。ある意味首都圏の幹線の駅であることを改めて知らされるとも言えよう。
そして、目を上に転じると鐘がある。一見何の変哲もない鐘であるが、これも記念碑としてのオブジェクトである。
その名も『希望の鐘』である。命名者については記述がないものの、プレートの説明によると米国式電気機関車 DD12 の床下に取り付けられていたものを同駅開業 130 周年にあわせ鉄道の日(10 月 14 日)にちなんで復元したとある。
『復元』という言葉から、これが実物なのかレプリカなのか判断に迷うところであるがどなたか情報をお持ちの方はいらっしゃるだろうか。また、前述の動輪も DD12 のものであろうか。
開業から 130 周年という節目の記念として当碑は建立されているものの、タイトルとしては『安全祈念碑』であり、これまでの長い品川駅の歴史を振り返り、未来を見据えた思いとして交通機関の原点である『安全』というテーマにフォーカスしていることは非常に意義深いことと思う。
現代の、特に都市圏の鉄道は速達性が非常に向上しており、通勤電車という単語もある通りかつての旅情あふれるアナログな世界の『鉄道』の雰囲気とはとても異なる雰囲気になっている。
しかし、どの時代においても『安全』というテーマは第一であることには変わりが無いのである。品川駅においては私の知る限りにおいて殉職碑の類は存在しない。従ってこの『安全祈念碑』はこれまでの同駅関連の殉職者(いるとしたらだが・・・)に対する誓いもしくは祈りのようなものではないだろうか。
考えすぎかも知れないが、少なくとも私はそのように感じている。
ところで、品川駅と言えば、東海道本線のホームの発車メロディーが鉄道唱歌であることを見過ごす訳にはいかないだろう。メロディーの最後には蒸気機関車の汽笛付きである。これも是非味わって頂き長い鉄道の歴史に思いを馳せて頂きたい。
また、同駅の高輪口の車寄せ付近に『品川駅創業記念碑』というのも存在している。以下のリンクよりご覧頂きたい。
さらに同駅には、東京都心のしかも改良工事の著しい駅としては驚くべきことに古レールにより構築されたホーム上屋が未だ現役である。こちらは以下の報告書を公開済みであるのであわせてご覧頂きたい。
最後に余談ではあるが、かつて東海道本線下りホームにあった常盤軒の駅そばには『お好みそば or うどん』というものがあった。これはカウンターにならんだ様々なトッピングを入れ放題という画期的なメニューであり、このホームの店舗にしかなかった。仕事で移動時やプライベートでもしばしば利用していたが、いつのまにやら閉店しており更地となっていた。駅そば(私はうどん党だが)ファンとしては非常に残念である。