我が国最古の駅のひとつ。
2010/06/08 公開。
先に公開した『品川駅安全祈念碑』でも触れたが、JR 東日本品川駅は我が国発の鉄道開業路線である新橋~横浜間の駅として 1872 (明治 5) 年 6 月 12 日に開業している。つまり、新橋~横浜間の正式開業は 10 月 15 日なのに対して新橋~品川間の工事の遅れにより、当駅~横浜間が先行して仮開業していたのである。
ちなみに、有名な話ではあるが同駅は品川区ではなく港区に位置している。現在では駅名がほぼ地名のように使われている場合が多いが、本来の品川とは京浜急行電鉄の北品川の少し南側である。いわゆる品川宿で有名な地域である。
実際品川駅は高輪と呼ばれる地域にある。何故品川と名付けられたか理由は把握していないが、やはり天下の東海道の最初の宿場町として知名度の高い地名を微妙に位置がずれているとは言え採用することによりこれまでの『宿』に代わる『ステーション』の存在を知らしめたかったのではないだろうか。
ここで、開業当時を少々偲んでみたい。
品川駅周辺は当時鉄道建設に反対であった兵部省の軍用地等を避けるため(測量のための立ち入りも拒否したという)当初の計画を変更し、陸地ではなく海上に築堤を設け線路を敷設したのである。以下の URL より当時の様子を地図でご覧頂きたい。中央に『停車場』とあるのが現在の品川駅であり、ドラッグにより北に移動すると海上の築堤の様子を確認することが可能である。
つまり、うるさい連中を華麗にスルーして線路を敷いたということになる。また、その海上築堤の建設途中と思われる写真が以下のものである。
出展:『図説 駅の歴史―東京のターミナル (ふくろうの本)』 ※管理人一部加工
この築堤に必要な土砂は鉄道敷設により掘削された八ツ山及び御殿山のものを用い、幅約 6m で法面は石板で覆われていたという。そして、初代の品川駅は上述の goo 古地図で確認できる通り、海岸ぎりぎりに設けられ以下のようなものであった。
出展:『図説 駅の歴史―東京のターミナル (ふくろうの本)』 ※管理人一部加工
ここで個人的には既に跨線橋が備わっていることが個人的に驚くべき点である。我が国の鉄道黎明期は鉄道先進国であるイギリスより指導を受けており、かの国では既に跨線橋の概念があってそれが持ち込まれたのだろうが、現在でも閑散路線では構内踏切で済ませられる場合もあるのに、明治初期しかも我が国初の鉄道の駅において既に跨線橋を設けた理由は何であったのだろうか。
また、これより現在の品川駅に至る変遷を辿ったサイトを見つけたので紹介したい。特に初代品川駅は構内全体が見渡せるアングルで撮影されており、先に紹介した写真よりもさらに開業間もない時期のものと思われる。
現在の品川駅やその周辺を見るとき、開業当時の様子を想像するのは困難な状況となっているが我が国における最古参の駅の一つでありながら、新幹線ですら停車するほどの駅として発展を遂げた原点を少しでも知ってもらえれば幸いである。
そして、この品川駅では開業 80 周年を迎え五代目となる駅舎の改築にあわせ記念碑が建立された。それが今回紹介する『品川駅創業記念碑』である。
調査日:2009/01/04
項目 | 内容 |
---|---|
正式名称 | 品川駅創業記念碑 |
所在地 | 東京都港区高輪 3-26-7 品川駅高輪口付近 |
設置年月日 | 1953 (昭和 28) 年 4 月 |
建立者 | 品川駅改築落成祝賀協賛会 |
同碑は高輪口を出た車寄せのさらに国道 15 号沿いに煉瓦で囲まれた花壇のような雰囲気の場所に設置されている。説明板もあり、ありがたい。
前面には『明治五年五月七日 品川駅創業記念碑 品川横濱間鉄道開業 伴睦 書』と刻まれている。なお、伴睦とは同碑建立時の衆議院議員であった大野伴睦氏の揮毫であることを示している。
裏面には品川~横浜間の仮開業時の時刻及び運賃表が刻まれている。これは『鉄道列車出発時刻及び賃金表』として駅構内等に掲示されていたものと思われる。これによると一日二往復で所要時間は 35 分であったことが分かる。ちなみに、当時品川~横浜間に途中駅は無かった。
解説板は平成 18 年 10 月に設置されたとあり、碑の両面の内容及び解説が書かれている。解説についてはほぼ本報告書の内容と重複するため記載を省略させて頂く。
我が国最初の鉄道が新橋~横浜間で明治 5 年 10 月に正式開業したが、これを遡ること 4 ヶ月に品川駅と横浜駅が我が国最初の駅として仮開業にこぎつけた。
当時の横浜駅は現在の桜木町駅であり、横浜駅は数度の移転の末に現在地に落ち着いているの比べ品川駅は開業当時の場所のままである。従って我が国の駅の中で最も長くその地にあることになる。
仮開業から正式開業の間の明治 5 年 7 月には川崎駅と神奈川駅が開業し神奈川県内にも途中駅が出来た。ということは、仮開業時の品川~横浜間ノンストップのダイヤはわずか一ヶ月程度のみの運用だったことになる。
現在で品川~横浜間ノンストップと言えば停車駅ベースだけで言えばほぼ新幹線に相当する。雇われ外国人が運転する蒸気機関車牽引の列車に始まり、夢の超特急への進歩を遂げたのである。品川駅はその変遷を全て見てきたことになる。歴史の重みを感じる駅である。
なお、品川駅に関して当サイトで以下の調査報告書も公開している。あわせてご覧頂きたい。