品川区ではなく港区にある品川駅に残る古レール。
2009/06/28 動画コンテンツを追加しました。
2008/07/24 判読不能の刻印についてご覧の方からの情報に基づき追記しました。
2008/07/10 公開。
鉄道の歴史に関わる世界に足を踏み入れたときには切っても切れない存在が品川駅であろう。同駅は京浜急行電鉄の駅でもあるが、ここではタイトルの通り JR 東日本の駅部分のみが対象である。
同駅は近年東海道新幹線の駅として新たに加わったり、駅周辺の大規模再開発も実施されるなど、歴史もあるが、著しく近代化された駅でもある。
実際のところ事前情報無しに現地調査を開始したが、多くの旅客ホームを有しているにも関わらず古レールはなかなか見つからなかった。しかし 3、4 番線のホーム階段と 11、12 番線ホームの上屋で発見することができた。
前者の古レールは比較的近年モノの古レールのようでほとんど曲げ加工を伴わない部位に使用されており、後者にはついては一般的なホーム上屋での使用形態であった。
調査日:2008/05/18
3、4 番線ホーム階段全景である。古レールはこの階段の裏面を支えている。
同階段裏面の古レールの架構である。途中の踊り場より上部部分に使用されている。踊り場より下は倉庫となっており、裏面をうかがい知ることはできない。
同階段頂部裏面の架構である。階段裏からわずかに曲げ加工を伴いそのまま水平の床面の梁(小梁というべきか)も兼ねているようである。
11、12 番線ホーム上屋全景である。ここもよくある形態の柱及び短辺方向の梁として古レールが使用されている。
同ホーム上屋架構である。短辺方向とはいえ比較的大きなスパンでもあるため、このように二本のレールを組み合わせていくつかの三角形を形成し、トラスのような効果を以て変形を防止していると思われる。
個人的にはシンプルさの中に機能美をも併せ持っていると思う。
今回発見した刻印は以下の通り。当駅の塗装は比較的厚いため刻印の判読は少々困難を伴う。その塗装の厚さは下に示した判読しやすさではピカイチのはずの UNION D の写真で感じて頂きたい。また、そもそも刻印の突出が弱いものに関しては判読不能となってしまう。
今回は判読不能のものを掲載したが、これも気合いを入れて調べれば類似例より解明可能かも知れないが宿題とさせて頂きたい。
当ページをご覧の方からの情報に基づき追記。ありがとうございました。> TAKATAKATAKA 様
No | 刻印 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | BARROW STEEL SEC166 1893. K.R.C. | ホーム上屋 | イギリス バーロウ社 セクション番号 166 1893 年製造 甲武鉄道発注 |
2 | CAMMELL SHEFFIELD TOUGHENED STEEL W.1886.SEC.131.I.R.J. | ホーム上屋 | イギリス キャンメル社 強化鉄(※商品名) 1886 年製造 セクション番号 131 鉄道局発注 |
3 | ??? STEEL ??? I.R.J. CAMMELL SHEFFIELD TOUGHENED STEEL W.1884.SEC.131.I.R.J. |
ホーム上屋 | 詳細判断不能。※識者指南希望。 イギリス キャンメル社 強化鉄(※商品名) 1884 年製造 セクション番号 131 鉄道局発注 |
4 | BV&COLD 1895 N.T.K | ホーム上屋 | イギリス ボルコウ・ボーン社 1895 年製造 日本鉄道(?)発注 |
5 | UNION D 1886 N.T.K(?) | ホーム上屋 | ドイツ ウニオン社 1886 年製造 日本鉄道(?)発注 |
正直言って、これほど大規模に都市化された品川駅で古レールを発見するとは思いもしなかったため、事前情報があってもなくても現地調査は重要であることを改めて痛感した。仮に見つからなくても、それはそれで『存在しない』という確認になるし、偶然見つければ喜びもひとしおである。
まさに宝探しである。
同駅で古レールがホーム上屋に使用されている 11、12 番線は東海道本線のホームである。このホームはラッシュ時間帯以外は比較的閑散としており長距離列車の発着ホームという雰囲気がある。このホームで古レールを鑑賞しながら、時折流れる発車メロディー『鉄道唱歌』に耳を傾けると、大都会のど真ん中にいるにも関わらず何か郷愁漂う独特の空間にいるような気がしてならない。
この発車メロディーの最後には SL の汽笛までつく凝りようである。未体験の方はぜひ一度お聞きいただきたい。
ちなみに、全く個人的な話で恐縮であるが、私が上京して最初に就いた仕事が建築構造設計のアルバイトであった。その事務所は同じ屋根の下に一つの部屋を分け合って知り合いの意匠設計事務所と同居していた。
ある日いつものように意匠事務所の方と談笑していると、とある設計中の図面を見かけた。円形が組み合わされた雲のような断面の屋根が連続する歩行者用通路だった。へんてこりんな断面の通路だなぁ、などと見ていたら将来品川駅にできる東西自由通路であることを教えられた。
今から、かれこれ 15 年ほど前の話である。
お元気ですか。おいらは設計に関わってないけど、あの通路はしっかり利用させてもらってます。> 某設計士殿
最後に同区間の前面展望動画を京浜東北線南行電車より共同撮影者と共に撮影したのでご覧頂きたい。