年に一度しか近づけない記念碑。
2011/02/02 公開。
JR 東日本山手線の原宿駅については以下の調査報告書において同駅に存在している古レール構造物を紹介している。
同駅についての簡単(すぎる)説明はこれらの報告書をご覧頂くとして、何と言ってもその特殊さを際立たせているのは隣接する明治神宮への初詣参詣の多客時のみ使用される臨時ホームの存在であろう。
東京都内または近郊にお住まいの方ならこの臨時ホームをご覧になったことのある方も多いであろう。この臨時ホームの建設時期は把握できていないが、下部構造が古レールであることから概ね昭和 30 年代ではないかと推測している。
そして、当報告書で取り上げる原宿駅開業七十周年紀念碑はこの臨時ホーム上にある。同駅の開業は古く、1906 (明治 39) 年であるから 70 周年と言えば 1976 (昭和 51) 年となる。つまり、同碑が建立時から移設されていないと仮定すると臨時ホームそのものはそれ以前より設置されていたこととなる。
ちなみに、以下のリンク先にて米軍により終戦直後の 1948 (昭和 23) 年に撮影された航空写真を閲覧可能であるが、最高で 200dpi というセコい仕様であるため、確認が難しいがこの当時はまだ臨時ホームは設置されていないように見える。
冒頭でも述べた通り、この臨時ホームは正月のわずかな期間のみ立ち入りが可能であるため、通常は接近が不可能である。そして今年(2011)の正月 1 月 3 日にいざ行かんと出かけたものの、別の調査対象を先に訪れているうちにタイミングを失ってしまったため、接近はいきなり一年後の宿題となってしまった。
ただ、幸いにも碑そのものは通常のホームに向かって正面を向いており、観察自体はその正面に限っては可能である。そのため、当報告書では背面が未確認であることをお断りさせて頂きたい。
調査日:2010/01/17
項目 | 内容 |
---|---|
正式名称 | 原宿駅開業七十周年記念碑 |
所在地 | 東京都渋谷区神宮前一丁目 18-20 JR 東日本原宿駅構内 |
設置年月日 | 1976 (昭和 51) 年 ※同駅竣工年より推測 |
建立者 | 未確認 |
果たして原宿駅を利用しているどれだけの人がこの碑の存在に気がついているのであろうか。そのような心配を起こさせるほど目立たない碑である。
ご覧の通り、そばに駅名標があるため比較的目に止まりやすいとは思われるが、碑そのものの大きさ及び碑面の文字も小さめである。
臨時ホームには正月以外立ち入れないため、背面を見ることは不可能である。そのため正面のみについての紹介となる。
正面には右端に『原宿駅開業七十周年紀念碑』と刻まれており、その左側には何かの詩歌と思われる文字が刻まれている。残念ながらこの部分については判読ができなかった。これは光の加減で写真から読み取りが困難であることに加え、達筆であるため私の読解力を超えているからに他ならない。
ただし、無理やり解読を以下のように試みた。間違いを含む可能性は極めて大であるが、紹介したい。恐らくは当時の駅長による作品ではないかと思われるがご存じの方は情報をご指摘頂けると幸いである。
ちよろずの人なみ迎え季節経て
古希を重ねし原宿の駅
年に数日しか近寄ることが出来ないと分かっていてそのチャンスが訪れた時には行き損じるというなかなか都内に住んでいながら近くて遠い碑である。
建立者及び建立の経緯が不明であるため、なぜ開業 70 年後という少々半端とも言えなくもないタイミングでの建立となったのか疑問である。50 年などとキリのいいタイミングでも良かったはずである。
また、70 年という歴史の重みに比べ非常にあっさり小じんまりとした碑なのも少々気になる。そして、2006 年には開業後 100 年が経過しているが新たに記念碑が作られた様子もない。
個人的には少々不思議な印象の碑である。引き続き長い目で調査を行っていきたい。