トップページ 総合調査 廃線調査報告書 道路調査報告書 産業遺構調査報告書 記念碑調査報告書 小ネタ ブログ リンク 管理人について

GNR - 第二次北海道計画

狩勝峠と糠平湖再び。すなわち旧狩勝隧道及び旧タウシュベツ川橋梁そして十勝三股へ。

2009/04/18 ~ 2009/04/20 現地調査実施。

概要

GNR - 第一次北海道計画 に引き続き、十勝平野と繰り出した。今回のお題目は以下の二大テーマである。

もちろん、士幌線は清水谷からではない。あくまでも調査対象区間である。そういう意味では根室本線の方は旧線区間は落合~新得で正しいが、今回は全区間の調査が叶わなかったため、看板に偽りありである。そのあたりについてはそもそも GNR とは何の略かを再度確認して頂ければ幸いである。

2009/04/18 は土曜日である。この日より調査開始である。これ自体はどうってことではないが、完了は 2009/04/20 は月曜日である。すなわち月曜日は仕事でお休みを頂いた。そして、その次の日からは札幌出張だったのである。当時の現場のお客さんの多大なご理解により、札幌出張開始日を月曜日からずらして頂くという特別のご配慮を賜り今回の調査が実現した。

初日はもちろん始発の飛行機で羽田空港から新千歳空港へと飛び、お決まりの快速エアポートに乗り込み南千歳でスーパーおおぞら号へ乗り換え新得入りとなった。ちょうど昼頃である。そのまま改札を出ること無く同駅の古レール調査を行い、そのまま予約していた駅レンタカー(現在は廃止されている)を調達し、今回の宿であるサホロユースホステルへと探索の準備を兼ねて向かう。

そこで事前の打ち合わせ通り、ご主人の多大なご好意によりお借り出来ることとなったマウンテンバイクを調達。レンタカーをそのまま置かせて頂きマウンテンバイクで出動となった。何故なら最初の調査対象である狩勝峠越えの根室本線旧線をかつて蒸気機関車が喘いだように自らも喘いでみたかったからである。

かくして今度はマウンテンバイクで新得駅に再び到着、調査開始である。駅を出てから数 km ほどは全く問題ない。基本的に遊歩道として整備された平坦な直線区間である。むしろ快適そのものである。しかし、その先からは事情が変わってくる。峠越えへ向けた勾配区間が始まる。しかも勾配区間の始まりとほぼ同時に残雪の登場である。それは所々ではあったがペダルを漕ぐことが出来ないほどの深さである。やむを得ずそこからしばしば手押しを強いられることとなった。

時折マウンテンバイクを手押ししながら 25 ‰の勾配をがむしゃらに写真を撮りながら進む。遊歩道として整備されていてもこの勾配はなかなかしんどい。結局約 2 時間半後に新内駅跡へ到着。周辺の現状をひと通り調査後、もう少しだけ先へ進めて夕方が迫りつつあったため打ち止めとした。明るいうちに宿に戻りたかったからである。

帰り道は国道 38 号で新内駅跡付近から一気に新得まで戻ることにしたが、この道の勾配がまた恐ろしい。マウンテンバイクで下るのは恐怖そのものであった。しかし、旧線跡は雪で所々手押しとなって時間がかかり過ぎるため他に選択肢は無い。国道の平坦部に出てほっとしたものの、今度はそこそこの向かい風の中を数 km に渡ってペダルを漕ぐこととなった。そして何とか明るいうちに宿へ戻り初日の調査が終了した。

二日目はレンタカーの出番である。車種を細かく指定しなかったために、4 ドアセダンタイプとなったが何とか後部座席にマウンテンバイクを積み込み新内駅跡までひとっ走りしてそのまま廃線跡を車で進めるだけ進む。しかし、サホロ CC ゴルフ場を過ぎてすぐにやはり残雪で断念。そのため今度は予め地形図で確認しておいた通り、国道 38 号の狩勝峠の 6 合目(記憶が曖昧)くらい分岐する林道からの廃線跡へのアクセスを試みる。

ここもやはり分岐早々に残雪のため車は断念。そこからマウンテンバイクで出動となった。帰りがいやになるくらいの急坂をしばらく下ると廃線跡へと辿り着く。そこはあの大築堤と旧新内隧道とのおよそ中間地点である。まずはここから狩勝峠すなわち旧狩勝隧道を目指す。ここからはほとんどの区間が残雪のため手押しとなった。そしてヘロヘロになりながら何とか目標の旧狩勝隧道を到着。そしてまた戻るが下りだが雪の中を手押しなので来るまでと同じくかなりしんどい思いをしてようやく先ほどの中間地点へ戻る。

しかし、廃線跡を辿るという観点からみるとここから新内駅跡までの区間が未踏である。再びここまで急勾配を戻らねばならないという約束された苦行を想像して大声で叫びながら急勾配を下る。そして、あの大築堤まで到達した。このまま未踏区間を制覇しようとも考えたが日没までの時間を考え途中で断念。再び急勾配を戻る。そしてようやく車まで戻って一旦国道 38 号狩勝峠のドライブインで昼食。ここまで調査開始から何気に 6 時間が経過。

雪でびしょびしょになった足をドライブインで乾かしながら食事を済ませ、今度は旧狩勝隧道の落合側を攻めるべく国道から眺めるもやはり残雪で、案の定アクセス林道も雪がてんこ盛りであったため接近を断念。そのまま国道を進み落合駅周辺の廃線跡を接近可能な範囲のみ調査を行い落合駅へ到着。同駅の古レール跨線橋を調査し 2 日目を終了。予定より早く新得へ戻れたため、今後の調査のために拓鉄公園を下見して北海道拓殖鉄道と国道 38 号の交差地点を探すもあまりの痕跡の無さに途方に暮れ宿へと戻った。

最後にとどめとして拓鉄公園の南にある北海道拓殖鉄道(鉄道廃止後現在は社名はそのままにトラック運送業)の事務所に突撃し、事前に詳細な場所を確認し忘れてしまっていた同社の保存鉄道車両である蒸気機関車 8622 号の所在を伺った。カーナビを使って丁寧に教えてくれた鹿追出身のおいちゃん、ありがとうございました。

ここまでで、今回の狩勝峠周辺の調査は完了した。この 2 日間の奮闘を勾配区間に限って GPS ログで示すと以下の通りである。少々分かりにくいかも知れないが大築堤付近の一部を除き新得駅から旧狩勝隧道までをチャリで踏破できた。

GNR - 第二次北海道計画 GPS ログ(狩勝峠付近)

最終日は糠平湖周辺すなわち士幌線跡の調査である。士幌線は帯広駅が起点であるが、調査対象としては山岳区間である清水谷~十勝三股に絞った。しかも、たった 1 日で全ての見どころを踏破出来るはずも無く可能な範囲のみである。

日の出時刻が 4:30 頃であったため、調査開始地点を元小屋ダムの南の音更川と二ノ沢川の合流地点と定め、新得の宿を 2:00 に出発。真っ暗闇をひたすら進み、途中鹿追で前日伺った 8622 号の場所を確認して元小屋ダム手前の国道 273 号から分岐する林道を進み目標地点に 4:00 過ぎに到着し夜明けまでしばし車中にて待機。そして夜明けと共に廃線跡へと崖から何とか降り立つ。勇川橋梁などを調査し再び国道へ戻り糠平ダム方面へと進む。黒石平駅跡から第三音更川橋梁を始めとする数々のコンクリートアーチ橋や路盤跡などを辿る。

この日は基本的に国道 273 号を車で進みながら容易に接近可能な箇所のみ徒歩で調査というスタイルをとった。何と言っても最終日であり夜には札幌へ移動しなければならなかったため、半分下見的な観点でなるべく広く浅くを心がける必要があったからである。

そして、途中路盤跡に落ちていた有刺鉄線が作業着のズボンをガッツリ切り裂いて太ももが露わとなったりしながらついに糠平へと到着。朝食休憩がてら鉄道記念館へ寄ったが月曜日は定休日となっており撃沈。やむなく駐車場でパンをかじって調査再開。この時点で 8:30。糠平橋梁などを調査し、国道 273 号糠平湖畔橋まで進み、付近にある旧道の入り口に車を停めて路盤跡を見下ろしていると一台のデカいトラックが脇に停まった。どないしたんやと思いながら見ると、運転席から一人のおいちゃんが出てきてこちらへやって来る。何事かと思ったら昨日 8622 号の所在を教えてくれた鹿追のおいちゃんであった。よく見るとトラックの側面には北海道拓殖鉄道の文字が。昨日いろいろと話しをした際に『明日は糠平周辺で士幌線跡を見に行く』と話題にしていた。そしておいちゃんもたまたまこの日は国道 273 号を通って三国峠を越える予定だったため、道中気にかけて探してくれていたそうである。なんという偶然か。今朝方夜明け前に 8622 号は無事に場所を確認出来て本日訪問予定であることについてお礼と道中くれぐれも気をつけてください、また新得に遊びに来ますと伝えた。おいちゃんは眩しい笑顔を残して颯爽と消えて行った。

2:00 から車を走らせての調査に少々しんどかったがおいちゃんのおかげで一気に元気を取り戻し、三の沢橋梁など国道から容易にアクセス可能な対象に絞って調査を行いつつ北上し、ついに本命中の本命へのアタックとなった。タウシュベツ川橋梁である。道中国道から糠平湖の対岸に小さく見える同橋梁を見て雪の少なさ、また全体が湖面から露出しているのを見て第一次北海道計画のリベンジが遂に果たせると期待に胸を膨らませてアクセス林道入口の閉じられたゲートへと到着。レンタカーよりマウンテンバイクを取り出し準備をしていると、平日にもかかわらず一人のおいちゃんが車でやはりゲート前までやってきて困った顔をしている。話しかけると何年かぶりにタウシュベツ川橋梁を見に来たが、なんでゲートが閉まってるんじゃいとのこと。確かに以前は開放されていて自由に入れたが今は森林管理署(旧営林署)に事前に鍵を借りないと入れない、自分は遠方から来たのでそれが出来ないため、ここからチャリで突撃すると説明して納得してくれた。

おいちゃんは以前にも来たことがあるということなので、この林道はチャリで行くのは大丈夫かを伺ったところ、全然問題ない、砂利道だけど大したことないよ、にいちゃんなら 20 分くらいで着くかな、とのことで安心した。じゃ、今からちょっくら行ってくると伝えるとおいちゃんは対岸から見える場所に移動して見ててあげるよとのこと。よっしゃということでおいちゃんに別れを告げ出発した。延長約 4km とは分かっていたが、アップダウンについては考慮していなかった。出発して路盤跡を横切ったりしながら進むとまもなく鬼のような登り坂が登場してそれもなかなかの距離延々と続く。おいちゃん、話が違うよなどと思いつつ今度は下り坂を経て無事にタウシュベツ川橋梁の手前の林道からの分岐に到着。そこから橋梁までは目の前だが雪解けの季節柄路盤跡は一面の水たまりでマウンテンバイクをそこに置いてけぼりにして徒歩で路盤跡脇の林をかき分け突進しついにあの夢にまで見たタウシュベツ川橋梁に到着。どのような光景だったかは当サイトのトップページを飾っている(2012/01/16 現在)のでご覧頂きたい。

この時の感動は忘れられない。とりあえず叫ばずにはいれなかったので誰も居なかったこともあり大声で叫んだ後、橋梁を堪能する前に約束通り遥か遠く対岸に見えたおいちゃんの車に向けて合図を送るべくタオルを取り出し力任せにしばらく振り続けた。きっと見てくれたはずだ。そしてしばし橋梁を堪能した。本当は川を渡って対岸へ行きたかった(橋梁は崩壊の危険のため通行禁止)が、まだ残る雪の下の川の様子が把握出来なかったため断念。それでもこうやってこの場所にいるだけで満足だった。そして戻ろうと思ったら写真を撮り始める前にその辺に置いたリュックの行方が分からなくなってしまい、10 分くらい橋梁の周辺を大焦りで捜索し無事発見。再びマウンテンバイクで車まで戻るべくまたあのアップダウンに向かった。途中、母と息子と思われる街中を歩くような普通の格好と靴の二人組とすれ違った。ちょっと待て、歩きだと橋梁まで一時間ほどかかりますよ、と告げると、大丈夫ですとの返事。マジかよ、お母さんパンプスはアウトだろと思いつつそのまま別れ車まで戻った。

そして、車で国道を北上しながら時折見えるコンクリートアーチ橋や幌加駅跡を経て十勝三股駅跡へ到着。予定通りの昼頃到着となったので三股山荘で何か食うぞと張り切って訪れると、これまた月曜日は定休日で撃沈。再びたまたま残していたパンをかじってやはりびしょびしょの足を乾かして調査再開。周辺をうろついてみたものの、雪がかなり残っておりしかも雪解けで至るところに水たまりが出来ている状態で満足な調査は叶わなかったが雪化粧をまとった大雪山系やおっぱい山などの素晴らしい景色とうまい空気と士幌線の終点まで歯抜けだらけとは言え辿り着いた達成感とで今回の計画としては充分満足であった。

そしてまだ 13:00 ではあるが、全てを片付け札幌へ移動しなければならないため新得へ戻るべく移動開始である。ここで北海道拓殖鉄道のおいちゃんに教えて頂いた鹿追の 8622 号機を訪れ、道の駅しかおいでマウンテンバイクを貸してくれた宿のご主人へのお礼のお土産を購入し、新得へ戻った。なんとなくあのおいちゃんへの感謝の気持ちから再び拓鉄公園を散策しガソリンスタンドでレンタカーへの給油とマウンテンバイクの洗車後宿へ戻った。ご主人にお礼を述べささやかなお土産を渡してまた来ますと告げた。さらに実は前日には有刺鉄線で破れた作業服を奥さんに縫って頂いたりと大変お世話になったので重ねてお礼を述べて宿を後にして新得駅でレンタカーを無事に返却した。そしてとどめに新得駅で駅そばをすすって来る時と同じスーパーおおぞら号で札幌へと移動して全行程無事完了である。翌日からは札幌で仕事であったが、個人的には既にひと仕事終えた気分であった。

では最終日の GPS ログは特別なことは何も無いがタウシュベツ川橋梁へとマウンテンバイクで向かった林道付近を紹介したい。

GNR - 第二次北海道計画 GPS ログ(タウシュベツ川橋梁付近)

調査対象一覧

調査対象一覧を地図に示す。

主な調査対象は以下の通り。これらに関連若しくは付随するものは一部省略している。地図と合わせてご覧頂きたい。

調査対象 調査観点 備考
JR 北海道室蘭本線【追分駅】跨線橋 車窓より下見 プレートガーター転用
JR 北海道根室本線【新得駅】古レール 現状調査  
火夫の像 現状調査 新得駅前の鉄道碑
JR 北海道根室本線旧線【落合~新得】 廃線跡現状調査 新得駅~旧狩勝隧道まで
JR 北海道根室本線【落合駅】古レール 現状調査  
音更山道碑 現状調査 糠平国道(国道 273 号の開削記念碑)
糠平国道開通記念碑 現状調査 国道 273 号改良工事竣工記念
糠平ダム慰霊碑 現状調査 糠平ダム建設に伴う殉職者慰霊碑
旧国鉄士幌線跡【清水谷~十勝三股】 廃線跡現状調査  
保存鉄道車両【8622】 現状調査 北海道拓殖鉄道の自社発注機

調査結果より

写真は旧国鉄士幌線跡の十勝三股駅跡の奥、同線の終端部を写したものである。実はこの先森林鉄道が伸びていたため、厳密な意味での鉄路の終点ではないものの、普通鉄道がここまで敷かれており、しかも眼前にそびえる山々の向こうへ伸びる計画だったのである。結局それも叶わず、ついには士幌線そのものも廃止となり、現在その夢は国道 273 号が事実上実現している。

旧国鉄士幌線跡【十勝三股駅】 


Copyright (c) 2006-2018 Golgodenka Nanchatte Research. All Rights Reserved.