コリアンタウンの駅の古レール。
2010/12/02 公開。
JR 東日本山手線の新大久保駅は『新』が付く駅名のイメージとは裏腹に 1914 (大正 3) 年 11 月 15 日の開業であり、まもなく開業 100 年を迎えようとしている歴史を持つ駅である。
Wikipedia によると、JR の駅で『新○○駅』という駅名の中では最も古いとのことである。
なぜこの時代に既に『新』を付けねばならなかったのかは、付近に位置する同社中央本線大久保駅の開業が前身の甲武鉄道によってさらに古い 1895 (明治 28) 年 5 月 5 日だったためと思われる。つまり先約がいたということであろう。
地図で見れば分かるとおり、先に開業した大久保駅がそこにあったからこそ後に山手線のこの位置に新大久保駅が開設されたのだろう。つまりは乗り換えの便を考慮したものと思われる。
駅周辺はいわゆるコリアンタウンであり韓国・朝鮮系の住民が多い。当然韓国料理屋も多く訪れたことのある方も多いだろう。かくいう私も大阪では鶴橋というコリアンタウンに住んでいたので自然に感じられる。日中に訪れたことや路地などに立ち入っていないためか、むしろ鶴橋に比べればあまりコリアンタウンとしてのインパクトを感じなかった。
同駅における古レールはホーム上屋とホーム下部構造の一部に使用されている。
調査日:2009/08/13、2010/01/17
ホーム上屋の古レール全景を新宿方に向かって望む。古レール架構の形態としては一見すると西武鉄道でよく見かけるタイプ(例:西武鉄道池袋線江古田駅)を連想させるが、柱の上部の開き具合がかなり異なっており、新大久保駅のものは開きがほとんどない。またその柱の延長部分が梁と重なる部分もかなり短い省エネ仕様である。
今度は高田馬場方を望む。同じ架構が続いている。柱には所々保護材が取り付けられているものの、概ね古レール架構のままでありすっきりした印象のホームである。
ただ、架構上部に目を転じるとアングルによる補強や筋交いも取り付けられており、シンプルながら多少凝った作りとなっている。
ホーム中央付近の一部には異なる架構の古レールが存在している。前述のいわゆる一本足とは異なり、大きく足を開いた二本足つまりはラーメン構造である。
ただ、不思議なことに二本足タイプはこの一箇所のみである。帰宅後写真で気がついたが、この部分のアスファルトに補修の跡が見られることから何らかの構造物がそこにあったと考えられる。
しかし、それが何なのかは把握できていない。詰所のようなものだったのか、はたまた階段だったのか詳細は不明である。ご存知の方は情報を頂けると幸いである。
二本足付近で今度は逆に高田馬場方を望む。この二本足はこの一箇所だけと述べたが、これも写真で気がつくという体たらくであるが以下の写真で数スパン奥に保護材の巻かれた二本足が見える。こちらについては現地で見落としてしまったため、再訪の上詳細を確認したい。
次に、もう一つの古レール使用箇所である南口のホーム下部構造である。改札手前の肌色の架構が古レールである。
上部も含めた全景を見る。ここでは便宜上ホーム下部構造としたが、この架構は何のためにあるのか把握できていない。そもそも高架下に位置する同駅でコンクリートの高架橋の内側にホームを支える古レール架構が必要だろうか。
この架構は上部がスラブに突き刺さっているため、詳細を伺うことができない。一見古レールによる跨線橋の下にいるような眺めとも思えるが、スパン割などがかなり異なり、圧倒的に大きい。
前述のホーム中央付近の二本足につながる可能性も考えられるが、ホーム上屋では 1 スパンであるのに比べこちらは 2 スパンであるのでこれも違うかも知れない。かと言ってこの部分のホームには特に重量のある構造物も見受けられず、なぜこの架構がここにあるのか謎である。
今回発見した刻印は以下の通り。刻印は全てホーム上屋で発見した。南口の謎のホーム下部構造では塗装が厚かったこともあると考えられるが刻印は観察可能な範囲では発見できなかった。
No | 刻印 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | CARNEGIE 190? ET I N T K | ホーム上屋 | アメリカ カーネギー社 190? 年 1 月製造 日本鉄道発注 |
2 | CARNEGIE 1905 ET I N T K | ホーム上屋 | アメリカ カーネギー社 1905 年 1 月製造 日本鉄道発注 |
3 | ※判読不可 BARROW か ? | ホーム上屋 | ※拡大可能な写真を掲載したので、判読にご協力頂けると幸いである。 |
4 | (S) ? 191? X | ホーム上屋 | 官営八幡製鉄、191? 年 10 月製造 |
5 | (S) 1930 IIIIIIIIII | ホーム上屋 | 官営八幡製鉄 1930 年 10 月製造 |
6 | (S) 60 A ? V | ホーム上屋 | 官営八幡製鉄、60LbS / yd、? 年 5 月製造 |
7 | UNION D 1886 N.T.K. | ホーム上屋 | ドイツ ウニオン社 1886 年製造 日本鉄道発注 |
8 | UNION D 1887 N.T.K. | ホーム上屋 | ドイツ ウニオン社 1887 年製造 日本鉄道発注 |
9 | CAMMELL SHEFFIELD TOUGHENED STEEL W.1886 ? | ホーム上屋 | イギリス キャンメル社 強化鉄(※商品名) 1886 年製造 |
10 | OH TENNESSEE 6040 ASCE ? | ホーム上屋 | 平炉製鋼法、アメリカ US スチール・テネシー社、コード番号 6040、アメリカ土木学会規格 |
新大久保駅と言えば 2001 (平成 13) 年 1 月 26 日に発生した乗客転落事故を忘れてはならない。ここでは主旨から外れるので詳細は触れないが尊い命が犠牲になっている。
同駅構内には犠牲者のうち救助のために命を落とすことになってしまった二名のための追悼プレートが掲げられている。これについても別途報告したい。
古レールについて言えば南口改札付近にごっつい架構は一体何のためにあるのか、何を支えているのか非常に気になる存在である。高架下の駅の構造物として比較的珍しいものではないだろうか。後年の追加なのか駅設置時からのものなのか何かしら情報をお持ちの方はご教示頂けると幸いである。