日本考古学発祥の地の古レール。
2008/06/27 公開。
JR 東日本京浜東北線蒲田駅に引き続き同線大森駅である。例によって報告書タイトルは同駅の正式な所属線名である東海道線と表記した。
同駅は 1872(明治 5)年の我が国初の新橋横浜間鉄道開通のわずか 4 年後に開業という歴史ある駅である。また付近には同駅開業の翌年にアメリカ人動物学者エドワード・S・モースが横浜から新橋に向かう汽車の車窓から発見し、我が国の考古学・人類学の先駆けとなったと言われる大森貝塚も存在する。
現在、同駅にはその大森貝塚発見 100 周年を記念したオブジェがホームに設置されている。これについては小ネタとして以前取り上げた以下のページをご覧頂きたい。
なお、先の蒲田駅もそうだが開業当時と異なり現在は列車線である東海道本線は停車しておらず、電車線である京浜東北線のみの駅として地域輸送に徹しているが、かつては長距離列車の発着していたのであり、その当時はまさに汽車を待つ旅情あふれる駅だったのだろうか。
ところで、現在同駅は東京都大田区に位置するが、この『大田』とはかつての大森区と蒲田区の合併によって生まれた地名なのである。
本題である古レールはホーム上屋に使用されている。
調査日:2007/03/04、2008/05/18
全景である。古レールはホーム上屋の柱及び短辺方向の梁に使用されている。長辺方向はアングル材による架構である。
全景である。比較的シンプルなデザインとは思うが、やはり一駅一駅味わいがあると言えよう。
今回発見した刻印は以下の通り。当駅ではアメリカのカーネギー社という比較的メジャーなメーカーの古レールが多く見受けられた。と言っても実際には不明瞭なものが多い。さらに言えば私にとってはただでさえ下手なので写真を撮るのがこれまた難しい。
ここで取り上げた以外にもいくつかの刻印が見つかったが、残念ながら判読不可能であった。しかし、判読できたものの中ではベルギーのコッケリル社の古レールが個人的に新鮮であった。
No | 刻印 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | CARNEGIE ET 1911(?) ? 60A | ホーム上屋 | 60kg / m、アメリカ カーネギー社 1911 年(?) ? 月製造 |
2 | CARNEGIE 1911 ET IIIIIIIII 60A | ホーム上屋 | 60kg / m、アメリカ カーネギー社 1911 年 9 月製造 |
3 | CARNEGIE 1911 ET IIIIIIIIII 60A | ホーム上屋 | 60kg / m、アメリカ カーネギー社 1911 年 10 月製造 |
4 | COCKERILL-XII-1923-60LBS-ASCE-(IJGR)? | ホーム上屋 | 60LbS / m、ベルギー コッケリル製鉄所 1923 年 12 月製造、アメリカ土木学会規格、鉄道省発注(?) |
地方出身者である私にとって、この大森駅はちょっとした思い出というか印象がある。今でこそ何とも思わないが、上京してしばらくの間は土地勘が無い地域だったため隣の大井町駅との地理的な区別がつかず、京浜東北線の品川の先には似たような名前の駅が二連発あったな、というものであった。まぁ、十年以上前の話である。
当時、りんかい線などは未開通であり東急にもほとんど乗ったことがなかったため、さらに印象の薄い駅というのが大森駅だったのである。
しかし、実際には当駅は冒頭で述べた通り印象が薄いなんぞ言ってられない大変古い歴史を持つ駅であり、かつては我が国の幹線中の幹線である東海道線の停車場だったのは感慨深いものがある。
ちなみに、珍しいものという訳ではないが、このようにホーム上屋をしげしげと眺めていると時々期せずしてこのような建物財産標にお目にかかる。
もちろん、その名の通りのものであり私がホーム上屋と言っているものが財産管理上は旅客上屋ということが分かったり、1 号ってことは 2 号もあるのか ? などと見ていて面白いものである。
今回は昭和 10 年とあるが、この財産標自体はずっと後年のものであろう。いつもこれを見かけた時に感銘を受けるのが中央の『鉄』である。意味は分かっていないが、何となく潔く明快な表現で気に入っている。
例によって、同駅の昭和 22 及び 38 年頃の航空写真が goo にて公開されているのでご紹介したい。当然ホームの古レールが見える訳ではないが。
撮影時期は不詳であるが、鉄道古写真帖という雑誌には東海道線の停車場時代と思われる古い写真が掲載されている。この写真について深追いはしていないが、明治時代を感じさせる雰囲気だと思う。
この写真に写っている線路に使用されているレールはそれこそ双頭レールだったのだろうか。
出展:大森停車場の旅客列車 三宅俊彦著『鉄道古写真帖』 ※管理人一部加工
また、隣の蒲田駅の調査報告書同様、当駅の様子を京浜東北線の南行電車からの前面展望動画として共同撮影者と共に撮影したものがあるのであわせてご紹介したい。雰囲気を感じ取って頂ければ幸いである。