東北の玄関口の古レール。
2009/08/18 公開。
JR 東日本奥羽本線山形駅は 1901 (明治 34) 年 4 月 11 日開業という大変歴史のある駅である。1901 年と言えば我が故郷福岡県において官営八幡製鉄所が操業を開始した年である。そして我が国のレールの生産は同製鉄所が嚆矢である。現在では山形新幹線が走り抜ける近代的な駅であるが、同駅開業時は米沢から延伸してきた官営鉄道の路線の終端駅であった。
首都圏在住の一平民としてはさくっと行ける駅ではないが、2009 年に完成した同社の E5 系新幹線電車の前身である『FASTECH 360 S』を見学するために新利府駅そばにある JR 東日本新幹線総合車両センターの『新幹線車両基地まつり』を訪れ 、その後せっかくなので仙山線全線の前面展望動画を仙台から山形へ向かって撮影し終えた後に偶然山形駅で古レールを発見し急きょ現地調査となったものである。
同駅はさすが新幹線車両が走ることと県庁所在地だけあって駅舎も近代化され一見古レールは存在しないように見受けられるが、たまたま仙山線から降り立ったホームだけに残っていたのである。念のため他のホームも確認したが、どうやら改良工事に伴い通常の型鋼となっており貴重な古レールの残党と言えよう。
その後山形新幹線で東京へ戻ったが車窓から見る奥羽本線の駅は趣のあるものが多く古レールのホーム上屋や跨線橋、さらにはホームの煉瓦積み等も散見された。じっくり調査に訪れたい路線である。
調査日:2007/07/28
同駅の古レールによるホーム上屋のデザインは直線のみで構成されており、すっきりとしている。ただ、写真で見るようにどういう訳か保安設備や看板やサイン等がほとんどないため、上屋だけでなくホーム全体がそもそもすっきりしており、美しい印象を受ける。
特徴としてはホーム上屋の場合古レールの使用箇所は往々にして短辺方向の部材のみとなる場合が多いが同駅では長辺方向も含め全てが古レールである。また、その長辺方向の架構も非常に無駄のないシンプルな形態である。
今回発見した刻印は以下の通り。
No | 刻印 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | (S) 60 A 1913 VII | ホーム上屋 | 60LbS / yd、官営八幡製鉄 1913 年 7 月製造 |
2 | (S) 60 A 1920 VI | ホーム上屋 | 60LbS / yd、官営八幡製鉄 1920 年 6 月製造 |
3 | 30 (S) 1932 IIIIII OH | ホーム上屋 | 30kg / m、官営八幡製鉄 1932 年 6 月製造、平炉製鋼法 |
4 | 30 (S) 1930 (以降確認不可) | ホーム上屋 | 30kg / m、官営八幡製鉄 1930 年 ? 月製造 |
5 | 30 (S) 1935 II OH | ホーム上屋 | 30kg / m、官営八幡製鉄 1935 年 2 月製造、平炉製鋼法 |
6 | BARROW STEEL XI/1890 SEC166 I.R.J | ホーム上屋 | イギリス バーロウ社 セクション番号 166 1890 年 6 月製造 鉄道局発注 |
冒頭でも触れた通り大変古い駅であり、開業当時の駅舎や周囲の様子等興味が尽きない。また、当時の人々が今日の駅を見たらどんなにたまげるだろう。何と言ってもミニ規格とはいえ新幹線車両が走り、東北の玄関口として東北の駅百選にも選ばれているのである。
その新幹線車両について当初の目的であった FASTECH 360 S 及び車両基地まつりの様子は以下の動画をご覧頂きたい。
さらに、山形駅では 2009 年夏(まさに本報告書の公開時期として旬だが)には新型の E3 系 1000 番台へ置き換えが進んでいる 400 系やキハ 48 系をジョイフルトレイン化したびゅうコースター風っこ等も動画に収めたのであわせてご覧頂きたい。
さらに、冒頭でも触れた通り仙山線全線の前面展望動画も撮影したのでこちらもご覧頂けると幸いである。羽前千歳駅付近の標準軌と狭軌が交叉する分岐器もぜひご覧頂きたい。